200415_クロノ・クロスについて

昨日突如私の頭に思い起こされ、あれ面白かったよなでもどんなストーリーだったっけ、、、?とネットの考察記事を読み漁ってみたところ、思った以上に考察沼が深すぎでほぼ丸一日閉じ込められてしまった。久々に死ぬほど頭をひねったので考えたことを雑に書き記しておく。

 

クロノクロスは、誰もが認める名作RPGクロノトリガー】の続編として世に出されたRPGである。しかしながら、トリガーと比べて暗い展開の物語、前作の主人公たちの物語内での扱い、あまりに難解な設定からトリガーのような盤石な評価は得られていない。(トリガーは好きだがクロスは嫌い、という人も一定数いることは昨日今日ネットの海を漂うことで知った。)

クロノクロスは、パラレルワールドと呼ばれる似ているが異なる世界を行き来して物語が進む。トリガーは時間を旅する物語だが、クロスは時空を旅する物語である。パラレルワールドの設定自体は2020年の今からすればありふれた設定であるが、時間軸の設定を矛盾なくまとめるのがとにかく大変であり、しかも凝りすぎるとプレイヤーの理解が追い付かない。クロノクロスも一回クリアしただけでは物語の大筋しか理解できないくらい難解になってしまっている。しかも、細かく理論的に整理していくとどうしても矛盾が残って説明できない部分が残り、クロノクロスが本当に好きで本質を理解したいと考えて物語にのめりこんだ者をちょっとばかり裏切るような面もある。

対して、クロノトリガーは、難しいことは何も考えずとも誰もが楽しめるRPGであった。上記の事情から、クロノクロスクロノトリガーの続編としては受け入れらないという人がいるのは納得できる。しかし、総監督の加藤正人氏のコメントにもある通り、クロノクロスの物語はハナからクロノトリガーの続編を意識していない。トリガーの世界で展開されうる無数の世界線・物語のうちのたった一例に過ぎないのである。

そうでなければあのトゥルーエンドが成り立たない。トゥルーエンドでは、ラスボスを倒した段階でキッドと一緒に旅したセルジュは世界線から消えてしまい、キッドの記憶の中にのみ確かにな存在として残る。キッドはいつかどこかの世界で彼女と一緒に旅をしたセルジュに会えると信じ、終わりの見えない時空の旅に出る。

このエンディングは、クロスの物語がトリガーの続編ではなく、トリガーの世界で展開されうる無数の世界線・物語のうちのたった一例であること、そしてトリガーの物語ですらも正史ではなく、他にも無数の世界線・物語があり、そのどこかに必ずセルジュが存在していると制作陣が意図し、物語内でもキッドがそれを信じ、そして何よりも制作陣もそれを信じているからこそ、成立する。だからこそ、キッドは晴れやかな表情で果てしない時空の旅をはじめ、そして終わりが見えなくとも決して表情を曇らせることなく時空の旅を続けるのである。一つの世界線が正史なのではなく、すべてがフェアなパラレルワールドの一つであるという大前提がある。エンドロールの実写パートで示された、セルジュやキッドが生きた世界線が、プレイヤーの生きている現代日本につながっているかもしれない、という初見ではぶっ飛んでいるように感じてしまう演出も、すべての世界線はフェアに存在しているという前提があれば一つの可能性として成り立つのである。私が今までプレイしたゲームの中で、物語がプレイヤーそのものに干渉してきたゲームはクロノクロスと、Ever17のみだ。とても印象に残っている。

 

まったく別の話になるが、もう一つ私の中でとても大事なことがある。それはクロノクロスの物語がクロノトリガーの登場人物である古代の王女サラに焦点を当てた物語であるということだ。

これはただクロノトリガーをプレイしただけの人には絶対に作れない。クロノトリガーの物語を愛し、キャラクターにのめりこみ、彼女がストーリーで唯一救われていないことがわかり、かつ彼女を救う物語を作りたいと思うほどにクロノトリガーそのものを愛した人間が複数集まったからこそ、世に出たのである。クロノクロスの制作陣はみな等しく、クロノトリガーを楽しみ、愛している。クロノクロスという作品全体から、クロノトリガーへの確かなリスペクトが感じられるのである。だから、わたしはどんなに内容が難解でも、設定に矛盾が残ろうとも、クロノクロスは素晴らしい作品だ、大好きだと心から思える。

 

クロノトリガーの続編としてクロノクロスをプレスリリースしたことは、商業的には失敗だったのかもしれない。自由にパラレルワールドを展開するには、クロノトリガーで展開された物語・世界線のイメージが強すぎた。公式じゃなく同人でやるべき内容だったんじゃないか、という意見も見かけた。正直少し賛同してしまいそうになった。

しかしながら、わたしは公式自らが本気で、おそらく死力を尽くしてクロノクロスを作り上げたこという事実を心から尊く感じた。自分もクロノトリガーの大ファンであるからこそ、会社を挙げた一大プロジェクトとしてクロノクロスを作ってくれたことをうれしく思い、そこまで人・会社・社会を魅了したクロノトリガーという作品を改めて偉大に感じたのである。

 

死ぬほど頭をひねってクロノクロスのことを考え、夜更かしして翌日起きられず午前有給をもらうことになったにもかかわらず、結局クロノクロスではなく、クロノトリガーは本当にすごい作品なんだ、という内容に決着してしまうのはいささか納得がいかない部分はあるが、これが私が約20時間頭をひねり続けたどり着いた結論なので素直に受け入れるしかないのだろう。

 

とても疲れた、、、しかし有意義な時間だった。